研究概要 |
我々は前立腺癌ならびにその前癌病変と考えられるprostatic intraepithelial neoplasia (PIN)に特異性高く発現する新規遺伝子としでprostate cancer antigen (PCA)-1を同定した(Konishi N, Shimada K et al.: Clin Cancer Res 2005)が、その生物学的機能について前立腺癌細胞株(PC-3, DU145)を用いて解析した。DU145, PC3にPCA-1siRNAを遺伝子導入し、80〜90%以上のknock down効率を得た場合、Bcl-xl発現の低下と細胞質へのcytochrome C遊離がみられapoptosisが誘導されることを確認した。同時にtyrosine kinase receptorの一種である、disooidin receptor (DDR)1の発現が有意に低下し癌綱胞の浸潤能が強く抑制されることが判明した。一方、PCA-1をDU145に強発現させるとDDR1やBcl-xlの発現が増加し、細胞増殖、浸潤能の増強と抗癌剤誘導性apoptosisに対する抵抗性が有意に上昇することを見出した。 さらに、DDR1の発現をsiRNA導入により低下させると、Bcl-xlの発現低下、apoptosisの誘導や浸潤能の低下をきたした。 以上より、PCA-1/DDR1シグナルは前立腺癌細胞の化学療法を含む細胞死抵抗性だけでなく、浸潤能の獲得にも重要な役割を担うと考えられた。他臓器腫瘍においては、DDR1受容体と癌浸潤との関連性がすでに指摘されているが、前立腺癌に関しては本研究がはじめての報告となる。今後、前立腺癌細胞や前立腺癌組織におけるDDR1発現やそのリン酸化状態(自己リン酸化を含む)、さらにBcl-xlを含むアポトーシス、癌浸潤に関連した下流シグナルについて検討する予定である。
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