神経発達障害の疾患の一つとして統合失調症が知られている。この神経発達障害説にもとづいた動物モデルが幼若期両側腹側海馬(neonatal ventral hippocampal : NVH)障害ラットであり、この動物は統合失調症患者と似た異常が思春期後に発現することから、最近注目されている。今年度はNVH障害ラットが示す異常行動の一つであるprepulse inhibition(PPI)の障害に対する抗精神病薬及びセロトニン(5-HT)アンタゴニストの効果を行動薬理学的に検討した。その結果NVH障害ラットのPPI障害は、定型抗精神病薬のハロペリドールではなく非定型抗精神病薬のリスペリドン及びクロザピンの投与によって改善した。このことからPPIの障害はドパミン神経ではなく5-HT神経の関与が推察されたことから、5-HT_<2A>アンタゴニストのketanserine及びMDL100907を用いNVH障害ラットのPPI障害に対する影響を観察したところ、これらアンタゴニストによって改善した。このことからNVH障害ラットのPPI障害の改善には5-HT_<2A>受容体が重要な役割を果たしていることを証明した。さらにNVH障害ラットに5-HT_<2A>アゴニストを投与したところ前頭前皮質の5-HT_<2A>受容体が作用点であるwet dog shakes responseという行動がコントロールと比べ有意に増加した。このことからNVH障害ラットは前頭前皮質の5-HT_<2A>受容体の機能が亢進している可能性も示唆された。
|