ヒトLkBL遺伝子と関節リウマチの関係を調べるために、ヒトIkBL遺伝子導入Tgマウスを用いて、II型コラーゲンによる関節炎(Collagen-Induced Arthritis : CIA)の誘導を試みた。II型コラーゲンを0.05M酢酸溶液に2mg/mlに調整して、等量のアジュバンド(CEA)を加え懸濁液を作製した。この懸濁液0.1mlを6〜8週齢の野生型マウス83匹およびTgマウス26匹の身体から2〜3cm離れた尾部に皮下注射した。その後、21日目に同様に2型コラーゲンを0.05M酢酸溶液に2mg/mlの濃度に調整して、等量のPBSを加えた懸濁液を作製し同様に皮下に注射した後、100日間関節炎の発症および重症度の観察を行った。その結果、Tgマウスにおいて関節炎の発症率および重症度について抑制される傾向がみられた。 また、関節の腫れが観られたマウスの関節について、II型コラーゲン投与後50日目に野生型マウスおよびTgマウスの関節の切片を作製した。その結果、野生型マウスについては関節滑膜細胞の増殖、滑膜細胞や周辺組織への炎症性細胞の浸潤そして肉芽組織による骨の置換といった関節リウマチの病態像とよく似た組織像を確認することができたが、Tgマウスについては野生型マウスで観られた病態像は観察されなかった。 また、野生型およびTgマウスにおける細胞増殖について調べるために、各マウスから摘出した脾臓をII型コラーゲンおよびPHA、コンカナバリンA、CD3抗体、CD28抗体の存在下で72時間培養した結果、いずれの添加物の存在下においても、野生型マウスに比べてTgマウスの細胞増殖能が低下していた。
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