研究概要 |
膵臓癌細胞株(KP-1N, KP-1NL, PK-1, Miapaca2)は、その発現強度に差異はあるものの、いずれもShhを発現している。これらの細胞株よりゲノムDNAを抽出し、Shhプロモーターのメチル化状態をsodium bisulfite modification PCR-sequencing法にて検討した。結果、転写開始部位の前後約700bp内に存在する、計42のCpG siteはいずれも脱メチル化状態にあることを明らかにした。 Shhのプロモーター領域を段階的に増幅、pGL3レポーターベクターに挿入し、その転写活性を評価検討することで、翻訳開始部位より365-568bp上流の部位に強い転写活性が存在することを見いだした。同部位にはE-box配列(-CAgaTG-)が存在し、この部位にin vitroで遺伝子変異(-ACgaGT-)を導入することで、転写活性が有意に減少することから、E-box配列に特異的に結合する転写因子がShhの転写を調節している可能性を明らかにした。 膵臓癌外科手術材料において、SHH発現を免疫組織学的に検討し、正常膵管上皮ではSHHの発現はほぼ認められず、浸潤癌においては組織型、分化度にかかわらずSHHを強く発現していることを見いだした。また、前がん病態と考えられているpancreatic intraepithelial neoplasia(PanIN)に関して詳細に検討し、PanIN-1bに相当する異型上皮より弱いSHH発現を観察し、PanIN-2、PanIN-3と異型度が上昇するにつれてSHH発現が上昇すること、とくに管内非浸潤癌と考えられているPanIN-3においては、ほぼ浸潤癌と同様の発現強度を示すことを明確にした。以上より、SHHは膵臓癌の発生に比較的初期から関与する、重要な液性因子である可能性を明らかにした。
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