本研究では赤痢アメーバシステインプロテアーゼ(CP)輸送の分子機構の解明を行った。以前我々が報告したCP輸送に関与するレトロマー複合体、またCPに結合する分子の同定を試みた。レトロマー複合体の構成分子であるVps35または主要なCPの一つであるCP5をHAタグとの融合タンパク質として発現させた強発現株を作成し、抗HA抗体を用いた免疫沈降を行った。SDS-PAGEの後銀染色を行い、親株では見られず、それぞれの強発現株でのみ見いだせるバンドの検索を行った。それぞれから候補となるバンドを見出し、質量分析を行ったが、Vps35からは既知のレトロマー複合体の構成分子しか見いだせなかった。一方CP5の強発現株から見出された約100kDaのバンドはシグナルシークエンスと膜貫通ドメインを持つタンパク質であり、そのC末端部分には細胞内輸送に重要なアダプタータンパク質(AP)複合体の結合モチーフ(YxxΦモチーフ)が存在していた。さらに赤痢アメーバゲノムデータベースを検索したところこの分子と相同な分子が他に10存在しうち8個にYxxΦモチーフが存在していた。cysteine protease binding family(CPBF)と名付けたこれらの分子は赤痢アメーバで初めて見出されたAP複合体を介した輸送経路に関与する分子であると考えられ、今後行うCP輸送の分子機構解明に向け、重要な知見を得ることができた。
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