研究課題
T.cruziが感染すると、宿主細胞のアポトーシス抑制因子cFLIPを大量に蓄積させ、アポトーシスを強く抑制する。この現象は本原虫の宿主生体内における生き残り、したがって病原性からみても非常に重要であると考えられる。細胞内cFLIPタンパクの発現量は、転写およびユビキチン(Ub)-プロテアソーム分解系のバランスによって決定される。今回、我々は感染細胞におけるcFLIPのUb化について調べた。[方法]T.cruzi感染・非感染HeLa細胞に対して、HAタグを付加したUbおよびFLAGタグを付加したcFLIPを共発現させ、プロテアソーム阻害剤で処理した後、抗HAタグ抗体を用いて免疫沈降を行った。沈降タンパク質をSDS-PAGEした後、抗cFLIP抗体を用いてウエスタンブロッティングを行うことによりUb化されたcFLIPの検出を行った。[結果・考察]細胞抽出液を用いて抗Ub抗体によるウエスタンブロッティングを行なった結果、ポリUb化されたタンパク質の全体量は感染および非感染細胞の間で差はみられなかった。一方、免疫沈降後のウエスタンブロッティングでは、Ub化されたcFLIPタンパクは感染細胞の方が非感染細胞よりも有意に少なかった。このことは、T.cruziの感染によりcFLIPのUb化が特異的に阻害されていることを示している。最近、ChangらによりcFLIPのE3(ユビキチンライゲース)がItchであることが報告された。そこで、cFLIPとItchの細胞内における相互作用について、共発現および免疫共沈実験により解析したところ、T.cruzi感染細胞ではcFLIPとItchの結合は強く阻害されていた。以上より、感染細胞ではcFLIPのItchへの結合が阻害されることでcFLIPのUb化・分解が阻害され、その結果、cFLIPが宿主細胞内に蓄積すると考えられる。
すべて 2006
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