肺炎球菌は市中肺炎の最も重要な原因細菌であり、高齢者、乳幼児、基礎疾患を有する患者ではしばしば髄膜炎、菌血症など侵襲性感染を起こして問題となる。high risk患者ではワクチンによる予防の重要性が認識されているが、その免疫機序についてはまだ十分には理解されていない。本研究では肺炎球菌ワクチンの予防効果における臨床免疫学的研究として、肺炎球菌ワクチン接種と抗体価の推移、肺炎球菌感染の急性期宿主応答における自然免疫リンパ球、Th1関連サイトカイン、好中球を軸とするネットワーク機構について明らかにすることにより、より有効なワクチンを開発するための分子的基盤を解明することを目的としている。本年度は、高齢者や呼吸器疾患を基礎に持つhigh risk患者14症例に対して肺炎球菌23価莢膜多糖体ワクチンを接種し、十分なインフォームドコンセントの上で、接種前と接種後経時的に末梢血リンパ球中のNKT細胞及びγδT細胞についてフローサイトメトリ解析を行うとともに、血清中のサイトカイン濃度について測定を行った。その結果、接種1〜2週後において、CD4+、CD8+、DN/NKT細胞、CD3+CD56+NKT細胞、γδT細胞がそれぞれ8、5、6、6、4例で増加し、逆に6、9、8、8、10例で減少した。各細胞において活性化抗原であるCD69、CD25の発現を解析したが、明らかな発現の変動は観察されなかった。一方、血清中のIFN-γ、TNF-αは接種後に増加する症例、減少する症例がみられたが、現時点ではNKT、γδT細胞との明らかな相関はみられなかった。以上の結果から、肺炎球菌ワクチンの接種後早期においてこれらの自然免疫リンパ球が何らかの役割を担うことが推察された。今後は、さらに症例数を増やすとともに、サイトカインのみならず抗体産生、ワクチン効果との関連にっいても詳細に解析する予定である。
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