マイコバクテリアの糖脂質ホスファチジルイノシトールマンノシド(PIM)とリポアラビノマンナン(LAM)の生合成に関与するマンノース転移酵素を同定し、酵素の機能、性質及び細胞内局在を解明する事を目的とした。PIMとLAMは、脂質部分としてホスファチジルイノシトール(PI)を有する。PIMは、このPIのイノシトールに2または6残基のマンノースが結合した、それぞれAcPIM2またはAcPIM6と呼ばれる分子に代表される。一方、LAMは、分子量がより大きい分子で、20残基以上のマンノースによってPIが修飾され、さらにマンノース鎖がアラビノース側鎖によって修飾された構造を有する。これらの分子の生合成にかかわるマンノース転移酵素として、データベース検索により四つの候補遺伝子がマイコバクテリアのゲノムから見いだされている。このうちの一つの遺伝子についてM.smegmatisにおいて欠損株の作成に成功し、欠損株の解析によってこの遺伝子産物がPIM生合成の五番目のマンノース転移酵素PimEであることを明らかにした。この成果をJournal of Biological Chemistry誌に発表した。また、残る3つの遺伝子のうち2つの遺伝子の欠損株をM.smegmatisで樹立した。これらの遺伝子の役割については、現在解析中である。また、宿主感染におけるPIM/LAMの重要性を検討するために、Mycobacterium bovis BCGで欠損株を樹立し、マクロファージの感染実験を行う事を目的としているが、現在までに一つの遺伝子の欠損株について作成の最終段階に入っている。
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