1.class IIおよびclass VI領域のDNA逆位を制御する候補遺伝子破壊株の作成 B.fragilis YCH46株ゲノム上に存在する33個のtyrosine site-specific recombinase(Tyr recombinase)と4つのserinesite-specific recombinase(Ser recombinase)のうちB.fragilis NCTC9343株のゲノム上にも共通して保存されている19個のTyr recombinase遺伝子および2個のSer recombinase遺伝子の欠失株を作製した。得られた遺伝子欠失株についてClass II(10箇所)、V(1箇所)およびVI領域(1箇所)のDNA逆位アッセイを行ったところ、Class V領域内に存在するBF0667 Tyr recombinaseがClass II、VおよびVI領域全てのDNA逆位に関与していることが判明した。つまり、BF0667はゲノム上に散在する3種類の外膜蛋白質SusC/Dクラスター(shufflon様多重逆位領域)を含む計12箇所にも及ぶ領域を包括的に一括制御していることが示唆された。 2.BF0667による逆位制御が腸管内への定着に果たす役割 BF0667による逆位制御が腸管内への定着に関与しているのかを検討するために、野生株とBF0667欠失破壊株を用い、無菌マウス腸管への競合定着試験を行った。野生株と変異株を1:1で混合し、無菌マウスに経口投与した後、経時的に大腸糞便中の菌数割合を計測したところ、経時的に変異株の割合が減少したことから、BF0667による逆位制御が腸管への定着性に重要であることが示唆された。このようなグローバルな制御系によって、刻々と変化する腸内環境に応じて表層抗原性を変化させ、表層抗原性の組合せレパートリーを増やすことで様々な宿主腸内環境へ適応しているものと考えられる。
|