Streptococcus pyogenesについて:S.pyogenesは過酸化水素産生性により産生/非産生の2グループに分けられる。本菌の過酸化水素産生性はlactate oxidaseが担っており、この現象はglucose枯渇後の乳酸再利用及びATP産生に関与することが示されている。過酸化水素産生株/非産生株共にほぼ完全なlactate oxidase遺伝子が存在するが、産生/非産生を分けるメカニズムは不明であった。本申請者はこれまでに、非産生株においてlactate oxidase遺伝子のpromoter領域に変異があることを見出していた。本研究では、染色体上でこの変異を除去した株を作成することに成功した。しかしながら、この株の過酸化水素産生性は弱く、産生/非産生を分けている要因はこの変異だけではないことを示唆する結果を得た。現在、過酸化水素産生株/非産生株のlactate oxidaseを精製し活性を比較する研究を遂行中である。 Streptococcus agalactiaeについて:本申請者は、S.agalactiaeに電子伝達系の重要構成成分であるmenaquinoneが存在することを明らかにしているが、genome databaseによると本菌には既知のmenaquinone合成系遺伝子は存在しない。本研究においてはSouthern hybridization法を用いて、本研究に用いた菌株にもこれらの遺伝子が存在しないことを確認した。さらに、^<14>C-mevalonic acidを用いたトレース実験により本菌のmenaquinoneがmevalonic acidから作られていないことを示す結果を得た。既知のmenaquinone合成経路ではmevalonic acidからmenaquinoneの側鎖が作られる。従って本結果は、これまでに知られていない経路でmenaquinoneが作られている可能性を示唆している。
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