研究概要 |
Galectin9(Gal9)はマウス腹腔macrophage(Mφ)に対して、TNF-αとIL-6の生産を誘導し、樹状細胞またはMφに対してGal9は成熟または活性化を誘導することがわかった。一方、生体内での機能に関して、我々はlipopolysaccharide(LPS)刺激により腹腔Mφの細胞内でGal9が生産されやがて分泌されること、in vivoでのGal9の腹腔内投与によりpolymorphonuclear neutrophil(PMN)の腹腔への集積が観察され、さらにGal9は集積してきたPMNにprostaglandin(PG)E_2の生産を誘導することにより、LPS投与によるThlサイトカイン(TNF-α,IL-12 p70 and IFN-γ)の生産を抑制するのに対しTh2サイトカイン(IL-4 and IL-10)は生産が亢進することがわかった。加えて、このThlサイトカインの生産抑制によりseptic shockモデルの一つであるgeneralized Shwartzman reactionにおいてGal9を投与したマウスはショック死を回避でき、この効果はレクチン活性に依存するものであった。これらの結果よりGal9は本来感染等により生体がpathogen由来成分に暴露された際に刺激を受けたMφ等免疫担当細胞より分泌され、過剰なTh1サイトカインの生産を抑制し生体をseptic shockより保護する機能があると思われる。 実際にSalmonella choleraesuis弱毒株を大量に感染させる急性感染ではGal9の投与によりマウスはshock死を免れ生存できるが、慢性感染モデルである強毒株感染時おいてはむしろ生存期間を短縮させた。以上の結果から、Gal9によるTh1サイトカインの抑制や集積してくる調節性作用をもつPMNはpathogenの排除において急性感染時には有意に機能するが、慢性感染時には防御能力を低下させることがわかった。Salmonella強毒株感染による慢性感染時には、感染局所である腹腔に大量のPMNがとどまり、pathogenを排除するのに必要なMφの活性化を妨げている可能性が示唆された。
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