研究概要 |
本研究では、Pseudomonas aeruginosaをモデル微生物として選択し、異属細菌間コミュニケーションシステムの存在の可能性を検討した。 緑膿菌の産生するQuorum sensing(QS)分子のひとつであるN-3-oxododecanoyl-L-homoserine lactone(3-oxo-C_12-HSL)(5-50μM)の存在・非存在下で各種グラム陰性細菌を培養したところ、Legionella pneumophilaのみ濃度依存的に菌数の低下が観察され、QS分子がL.pneumophilaに対して生育抑制効果を示すことが分かった。このとき,3-oxo-C_l2-HSLのL.pneumophilaに対する作用は静菌的であり、殺菌的な作用は観察されなかった。L.pneumophilaのバイオフィルムの産生は、培地中への3-oxo-C_12-HSLの添加により著しく抑制された。さらにL.pneumophilaのQS関連遺伝子であるlqsRの発現や、いくつかの病原性関連遺伝子(dotAなど)も、3-oxo-C_12-HSLの添加により抑制された。以上の結果から、P.aeruginosaのQS分子である3-oxo-C_12-HSLは、L.pneumophilaに対して静菌的作用を持ち、L.pneumophilaのバイオフィルム産生やQS関連遺伝子の発現に対しても影響を及ぼすことが分かった。多くの病原細菌のバイオフィルム産生および病原性遺伝子の発現はQS機構により制御されていることからも、本研究により得られた結果は、既存の概念(同種細菌間)とは異なり他の細菌のQS分子を介した異属細菌間コミュニケーションシステムの存在を示唆するものと考えている。
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