・線毛の発現と代謝発現制御因子との関連解析 緑膿菌の菌体付着初期において重要な因子である線毛の発現について、生育条件、各種発現制御因子との関係を解析した。これまでに作製した、線毛の主要な構成成分であるPilAの発現制御因子(PilR)の破壊株と、PilRと同じσ54依存型の2成分制御因子であり、緑膿菌の代表的な代謝酵素発現制御因子であるcbrB、ntrC破壊株、更にpilRとの2重破壊株を供試菌株として解析した。昨年度に引き続き、炭素源、窒素源となる基質の種類を変えた培地(各種アミノ酸、糖類)で各供試菌株を培養し、PilAの発現量を解析した結果、培地成分による明らかな影響は見られなかった。既にグルタミン酸培地で確認したCbrBの補佐的な制御が見られる程度であり、予想されたクロストークは確認されず、培地成分と線毛発現との連動は他の要因であることが示唆された。 ・医療設備内分離緑膿菌における定着因子の特性 医療機関での施設内環境サーベイランスを行い、得られた分離株と、緑膿菌感染症患者由来株との間で特徴的な差があるのか、線毛運動性(TM)に注目して研究を行った。TMが特に高い菌株が、医療施設内分離株で約15%、患者由来株では約55%に見られた。今後、生育環境の違いにおける線毛発現と代謝能との関係解明を進めていく。 ・緑膿菌のポリアミン存在下における薬剤感受性への影響 緑膿菌は培地中へポリアミンを添加すると薬剤感受性が変化するが、その機構は未だ明らかになっていない。2成分制御因子による代謝酵素発現調整を受けているポリアミンの代謝機構から薬剤感受性変化作用点を検討した結果、これらの変化が、ポリアミンの菌体内への移行に伴う現象ではなく、菌体外に存在するだけで生じることを明らかにした。今後、線毛を含めた菌体外のポリアミンから直接影響を受ける箇所の因子について関連解析を進めていく。
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