研究概要 |
Legionella pneumophila はレジオネラ肺炎を引き起こす細胞内寄生菌である。本菌は経気道感染後,ヒト肺胞マクロファージや上皮系細胞内で増殖できるという能力が病原性を発揮するのに最も重要な性質として挙げられる。特に感染初期において,レジオネラのヒト肺胞上皮細胞への侵入および細胞内での増殖は感染成立に重要な役割を果たしていることが指摘された。本研究ではこれまで L.pneumophilaのエフェクター分子のヒト肺胞上皮細胞内における役割および L.pneumophila感染における肺胞上皮細胞の免疫応答機構を解明することにより,肺胞上皮細胞がレジオネラ感染の病態形成と感染防御に果たす役割についての研究を進めてきた。 1.L.pneumophilaの肺胞上皮細胞への侵入機構について調べた。L.pneumophilaはmicrofilament-dependent経路によって細胞内に侵入する。また,その侵入はRac1とCdc42に依存し,Rhoファミリーに非依存性であることが明らかになった。今後引続き,L.pneumophilaの侵入経路に関与する分子を明らかにする予定である。 2.L.pneumophila感染における肺胞上皮細胞の生体防御応答を解明するために,我々は肺胞上皮細胞のサイトカイン応答について調べた。その結果,肺胞上皮細胞はIL-6,IL-8,TNF-α,MCP-1などサイトカインのmRNA発現とタンパク分泌が見られた。また,IL-6とTNF-αのMRNA発現とタンパク分泌は L.pneumophilaの細胞内菌数に依存したので,細胞内シングナル伝達経路が L.pneumophila感染によって活性化されることを示唆した。
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