ヒトパルボウイルスB19(B19)は伝染性紅斑のほかに、成人での多発関節炎、自己免疫疾患様所見など多彩な臨床所見を惹起し、その感染動態、制御が臨床上重要である。しかし、in vitroでは感染性粒子を産生する系の確立が困難で、感染、細胞内増殖の分子機序は不明である。本研究では:B19の細胞内動態を明らかにするとともに、最近見出した新規レセプター細胞表面Ku80のB19感染・複製制御への関与について解析を行ってきた。 B19の細胞内動態を明らかにするために、蛍光ラベルした精製B19ウイルスを赤芽球系細胞株UT7/Epo-S1の高感受性クローンに感染し、エンドソームマーカーであるトランスフェリンレセプターや抗EEAl抗体で染色した。B19は共焦点顕微鏡下でエンドソームとの共局在が観察され、感染後エンドソームヘ移行することが確認された。 エンドソーム形成にはアクチンの再編成が必要とされるが、アクチン重合阻害剤であるLatranculinA添加によりB19の細胞内への取り込みが阻害された。またすでに新規レセプターKu80を見出しているが抗Ku80抗体によりアクチン重合が促進することが確認された。Ku80を介したシグナル伝達はB19の細胞内への感染効率の増加に関与している可能性が高いと思われた。 これをふまえて、来年度はKu80からのシグナル伝達経路を明らかにするとともに、B19の細胞内への取り込み効率への関与についてさらに解析を行っていきたい。
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