研究概要 |
肺サーファクタント免疫増強作用の機序について検討を行った。サーファクタントとワクチンを混合した経鼻ワクチンの電子顕微鏡観察を行ったところ、経鼻ワクチン液中でサーファクタントはその膜上にワクチンを結合したリポソーム状の形態をとることが明らかとなった。 サーファクタントの免疫増強作用の機序には、サーファクタントリポソームを運搬体とした抗原デリバリーがあるのではないかと考えた。これを明らかとするために、マウス骨髄より調製した樹状細胞をモデルとした検討を行った。 蛍光標識したワクチンを樹状細胞へ添加し、一定時間後の細胞をフローサイトメトリーにより測定した蛍光強度を指標として評価を行ったところ、サーファクタントにより細胞へのワクチンの取込量が増加することが明らかとなり、サーファクタントによる免疫増強に抗原提示細胞へのワクチン取込の増進が関わっていることが示された。 また、18, 19年度の検討により免疫増強作用の必須成分であることを明らかとした、膜貫通サーファクタントタンパク成分が細胞への取込増進に関与しているか否かを検討した。膜貫通サーファクタントタンパク成分を材料とした人工サーファクタントを用いて樹状細胞への蛍光標識ワクチンの取込を検討したところ、天然サーファクタントと同様のワクチン取込増進が認められた。この効果は他のサーファクタントタンパク成分を材料とした検討では認められず、膜貫通タンパク成分のサーファクタントによる細胞へのワクチン取込増進への寄与が確かめられた。
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