私たちは麻疹の小動物モデルとしてCD150遺伝子改変マウス(ヒトCD150マウス)を作成し、SSPEの病態の解明を進めている。ヒトCD150マウスではI型インターフェロンレセプター(IFNAR)を欠損させると麻疹ウイルスが全身のリンパ系臓器に広がることを確認している。EGFP組込み病原株麻疹ウイルス(EGFPウイルス)をIFNAR欠損ヒトCD150マウスに腹腔内投与後、感染のピークと考えられる4〜7日目に大脳でのEGFP発現細胞の探索を行ったが感染を認めなかった。一方、全身の多くのリンパ節でEGFPは確認可能であった。 そこで、より直接的な感染ルートである脳内接種で検討することとした。新生児ヒトCD150マウスを用いて、野生株麻疹ウイルス、EGFPウイルスの脳への直接接種を行ない、神経症状を指標に経過観察を行っている。また、今後は接種後のウイルスRNAの検出・EGFPの蛍光の検出をタイムコースを追って行う予定である。1型インターフェロンが麻疹ウイルスの生体内での増殖に対して抑制的に働くため、IFNAR欠損ヒトCD150マウスを用いた各種麻疹ウイルスの接種を並行して行っているところである。 個体を用いた解析は困難である可能性を考え、生体(生後3週以内)より脳を摘出後感染を試みた。新鮮脳を用いた急性期脳スライス法によるEGFPウイルスの感染実験を行ったが、48時間以内での明らかな感染を認めなかった。しかし、急性期脳スライス法でのウイルス感染実験の報告はほとんどないために、今後は海馬の再構成系や初代培養系を用いて検討していく予定である。 麻疹ウイルスはマウスの細胞での増殖が悪いことが報告されているため、ヒトCD150を恒常発現マウスの培養細胞株への馴化を試みている。現在25回の継代を行っているが、まだ馴化していない。今後は継代を持続する予定であるが、継代細胞の変更も視野に入れている。
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