アイチウイルスは、胃腸炎関連のピコルナウイルスである。本研究は、アイチウイルス複製複合体形成に関わるタンパク質や複製複合体中でのタンパク質の役割を明らかにすることを目的とする。今年度は 1)非構造タンパク質の一つ、L タンパク質の機能解析、2)哺乳類ツーハイブリッドシステムを利用した非構造タンパク質同志の相互作用解析を行った。 1)L タンパク質の機能解析:我々はこれまでに、L タンパク質がポリプロテインの一部として存在している間に、複製複合体形成のために重要な働きをしている可能性を示した。今年度はこの可能性を検討する目的で、L タンパク質がプロセッシング前のポリプロテインの細胞内局在におよぼす影響を調査した。その結果、L を含むポリプロテインは、感染細胞におけるゲノム複製部位の局在と類似して、細胞質にdot 状に存在した。一方、L を含まないポリプロテインは、細胞質の核周囲に存在したが、dot は形成しなかった。以上の結果は、L タンパク質は翻訳直後、ポリプロテインの一部として存在している間にポリプロテインの細胞内局在を決定し、複製複合体形成を効率良く導いていることを示唆する。 2)非構造タンパク質同志の相互作用解析:哺乳類ツーハイブリッドシステムを利用して、アイチウイルスの非構造タンパク質とその切断中間産物L、2A、2B、2BC、2C、3A、3AB、3C、3CD、3Dの全ての組み合わせの相互作用を検討した。その結果、5つのタンパク質におけるホモニ量体形成、24ペアのヘテロ二量体形成を観察した。今回調べたタンパク質の全てが、少なくとも一種類と相互作用を示した。検出された相互作用には、他のピコルナウイルスでは確認されていない組み合わせも含まれていた。今後、検出された各相互作用について、複製複合体形成やウイルス複製における意義を調査する考えである。
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