ヘルパーウイルスを用いて11本のうち1本のゲノム2本鎖RNA(dsRNA)分節がcDNAに由来する組換えロタウイルスの作製、および回収の高効率化を目指している。ロタウイルス遺伝子をT7プロモーター下流に配置したプラスミドを構築し、このプラスミドをT7RNAポリメラーゼ発現組換えワクシニアウイルスを感染させた培養細胞にトランスフェクションすることで、cDNA由来ロタウイルスssRNAが細胞質内で転写される。このプラスミドを導入した細胞にヘルパーウイルスとなるロタウイルスを重感染させた後に、抗原性、ウイルス学的形質の違いから目的の組換えウイルスを単離することを試みている。サルロタウイルスSAl1株のVP4遺伝子ssRNAを発現するプラスミドとヘルパーウイルスとなるヒトロタウイルスKU株を用いて、KU株に対する特異的中和モノクローナル抗体存在下で培養を行ったところ、回収効率は著しく低率ながらも、KU株をベースとし、cDNA由来のSA11株VP4遺伝子を保有する組換えウイルスの単離に成功している。更に、2種類のサイレント変異を各々単独あるいは同時に導入したcDNA由来VP4遺伝子を有する組換えウイルスの単離にも成功している。組換えウイルスの回収効率を改善するため、用いる培養細胞種、組換えワクシニアウイルス感染価、培養時間およびトランスフェクションするプラスミド量といった各段階の条件を精力的に検討した。現在、得られた条件を用いて人工変異を導入したcDNA由来VP4およびVP7遺伝子を有する組換えウイルスの作出を試みている。このヘルパーウイルスを用いる系が高効率化すれば、次には、ヘルパーウイルスフリーの系、つまりロタウイルス分節ゲノム全11本のssRNAを上述の構造のプラスミドから細胞質内に供給することで、完全にクローン化cDNAから感染性ロタウイルスを回収する系の開発を目指したい。
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