研究概要 |
本研究ではM細胞の分化誘導に重要なエフェクター細胞の同定を試みた。過去のリンパ球欠損マウスなどの観察から、M細胞の分化・維持にはパイエル板上皮とリンパ濾胞間のクロストークが必要であることが予想される。これには両者の情報を仲介するエフェクター分子が必要と考えられるが、申請者はパイエル板上皮より分泌される特殊なケモカインがその役割の一端を担っていると予想し、ケモカイン発現プロファイルの解析を行った。その結果、CCL9,CCL20及びCXCL16がパイエル板上皮特異的に発現することを見出した。これらケモカイン又はケモカイン受容体を欠損するマウスのパイエル板を観察したところ、興味深いことにCCL20受容体(CCR6)欠損マウスにおいてM細胞数の著しい減少が認められた。パイエル板上皮細胞はCCL9及びCCL20を恒常的に発現しており、パイエル板微小構造の維持に重要な役割を果たしている。我々は、これらのケモカインを介した特定の免疫細胞と上皮層の相互作用がM細胞の分化誘導に重要と考え、CCL9又はCCR6(CCL20受容体)欠損マウスのパイエル板を観察した。その結果、CCR6欠損マウスにおいてのみM細胞の著しい減少が認められた。そこでCCR6欠損および野生型マウスのパイエル板リンパ球を比較解析した結果、CDllcを発現する特殊なB細胞(CDllc+B細胞)がパイエル板に存在し、この細胞群がCCR6欠損マウスにおいて顕著に減少していることを明らかにした。種々の検討結果より、CDllc^+B細胞はM細胞の分化誘導に重要な役割を果たすことが示唆された。
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