BLNKはB細胞抗原受容体(BCR)を介して誘起されるB細胞活性化において非常に重要な役割を担うアダプター分子であるがその作用機序に関してはまだ不明な点が多い。 研究代表者は、BLNKのN末端に存在するロイシンジッパー構造に着目し、BLNK欠損DT40B細胞にBLNKのロイシンジッパー構造を欠失する変異体を発現するようKnock-inしたところ、BCR刺激後の細胞内カルシウム動員に著明な減弱を認めた。またこのBLNKロイシンジッパー構造に特異的に結合するp90及びp110の二つのチロシンリン酸化蛋白質を同定することに成功した。次にこれらp90及びp110をコードするエクソンを含むゲノム増幅断片をクローニングし、それぞれのターゲティングベクターを構築した。作製したターゲティングベクターを用いて、両対立遺伝子が破壊されたp90欠損細胞ならびにp110欠損細胞を単離する事に成功した。さらに得られた遺伝子欠損細胞についてBCR刺激後の細胞内カルシウム動員の検討を行ったが、いずれの遺伝子欠損株においても野生型細胞と比較し有意な差を認めなかった。また他のBCR下流のシグナル伝達系の活性化状態についても検討を行ったがやはり有意な差を認めなかった。 これらの結果からBLNKのロイシンジッパー構造を介した細胞内カルシウム動員及び他のシグナル伝達系の制御には今回同定したp90やp110を介さない分子機構により制御されていることが示唆された。
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