研究概要 |
成熟T細胞受容体(TCR)を介するT細胞活性化にはNFkB活性化が必須であることが知られている。プレTCRは、TCRと同じシグナル伝達サブユニットを有するが、プレTCRを介するT細胞分化におけるNFkBの役割に関しては明らかではない。そこで、成熟TCRを介するNFkB活性化に必須なCard11,Bcl10の、プレTCRシグナルへの寄与をCard11欠損マウス、Bc110欠損マウスを用いて調べた。 ・β-selectionにおけるNFkBの役割 胸腺よりDN細胞を単離し、dlll1発現Tst-4ストローマ細胞上で培養することにより、DPに移行させるin vitro β-selection系を確立し、この系でCard11 KO、Bcl10 KOを検討したが、正常なDPへの移行が認められた。 CARD11 KO x Rag2 KOマウスに抗CD3抗体を腹腔内投与するin vivo β-selection誘導系においても、正常なDPへの移行と細胞増殖が認められた。 ・対立遺伝子排除(allelic exclusion)におけるNFkBの役割 DOll.10 TCR Tgマウスは外来性TCRb鎖の強制発現に伴い、内因性TCRの再構成が抑えられることが知られており、対立遺伝子排除のモデルとなり得る。そこで、DOll. 10 TCR Tg x CARD11欠損マウスを作製し、TCRb鎖の再構成を調べた。その結果、CARD11欠損下においても正常な内因性TCR再構成の抑制が観察された。 これらより、成熟TCRの下流とプレTCRの下流では、その経路の寄与率が明らかに異なることが判明した。プレTCRではCard11,Bc110と異なる他のNFκB活性化経路が代替しているのか、またそもそもNF出活性化プレTCRシグナルには必要ないのかを、NFκB活性化を可視化するTgマウス、他のNFκB活性化経路を欠損するマウスを用いて今後解明する。
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