ES4004分子を過剰発現したB細胞では、抗原刺激後のERKのリン酸化が亢進し、IgG1抗体産生が有意に増加することをこれまで明らかにした。この原因メカニズムを探るため、ES4004分子過剰発現B細胞の増殖活性、アポトーシス抵抗性、クラススイッチ誘導能を調べたところ、対照B細胞と有意な差は認められなかった。これに対し、抗体産生細胞の指標となるCD138陽性細胞の頻度は有意に増加していたため、ES4004分子の過剰発現は、抗原刺激に対する抗体産生細胞への分化を促進し、これがIgG1産生量の増加に繋がると推察された。さらに、ES4004分子を過剰発現したB細胞の発現遺伝子を調べたところ、抗体産生分化を調節するいくつかの分子の発現量が増加しており、ES4004分子の発現量により抗体産生細胞への分化誘導シグナルが制御されている可能性が示唆された。 生体内におけるES4004分子の機能的役割を明らかにするため、ES4004の機能エクソンを欠損したマウスの作製を試み、キメラマウスを得ることに成功した。ES4004欠損マウスでは、全身性のB細胞記憶に加えて、粘膜系のB細胞記憶に異常が生じる可能性が考えられたため、粘膜系メモリーB細胞を解析する新しいシステム開発を試みた。その結果、インフルエンザウイルス感染後に気道粘膜組織で産生されるメモリーB細胞を同定する技術開発に成功した。今後、このシステムを用いてES4004欠損マウスのB細胞記憶応答を解析する予定である。
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