本年度は初年度の作業として、企業健保組合から診療情報請求書の使用許可を得、平成17年1月から3月までの3ヶ月間に対して保険組合に提出された紙診療情報請求書の第3者による匿名化、続いて電子データ化作業を行った。一部電子化が不完全な部分な部分を手作業により補完を行う等して、解析可能な形とし、ある一定の解析を行って、米国総合内科学会に抄録を提出し、受理、4月に発表予定である。この解析によれば、特に原因の同定されない上気道感染に於いて抗生物質の処方される割合は外来受診のうち約60%であった。特に小児の方が大人よりも抗生物質処方の頻度が大きかった。抗生物質の種類については、第3世代セファロスポリンが半数以上を占め、次にマクロライド系、ニューキノロンと続いた。本来上気道感染の原因菌であるグラム陽性球菌を特異的にカバーするペニシリン系や、マイコプラズマなどに効くマクロライドよりも第3世代セファロスポリンが好まれる理由は不明である。院内処方と院外処方の比較も行い、院外処方のほうが抗生物質が処方される割合は多かったが、その差は大人で大きく(院内処方58%に対し院外処方49%)子供ではあまり無かった(61%対59%)。また、処方日数は、院内処方の方が有意に短かった(2.1日対4.3日)。今回の解析は、紙レセプト電子化に対する様々な問題点(読み取り過程での一部手書きの問題や、機械による読み込みが手書きが混じる時に非常に不正確になり、かつその検出が十分でないこと)などが明らかとなり、解析に使用したレセプトも健保組合から使用許可をえたものすべてではなかったが、来年度には、全てのレセプトを電子化し解析を行う。また、このような上気道炎に対して高すぎる抗生物質処方率の原因として、患者の理解というものがどれほどあるのかという調査研究を行う予定である.
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