研究概要 |
本研究はピロリドン誘導体およびアダマンタン誘導体による新規アルツハイマー病治療薬の創製を目標に研究を行なった。本研究では、はじめにアルツハイマー病の神経変性疾患に非常に類似した症状を示す動物モデルの作成を行なうため、嗅球摘出モデルの作成を行ない、嗅球摘出によりマウスの海馬CA1領域においてアセチルコリン神経系脱落並びにNMDA受容体機能の有意な低下が引き起こされていることを明らかとした。また、記憶学習機能に重要な役割を果たしているCaM kinase II活性が有意に低下していることも明らかとした。(Moriguchi et al.,J.Neurochem.(2006)) 一方、ピロリドン誘導体の一つであるnefiracetamが記憶学習機能を有意に亢進することを行動薬理学的解析により明らかとした。nefiracetamは海馬CA1領域におけるLTPを有意に増強すること、さらに、海馬CA1領域においてCaM kinase II活性を有意に亢進することを明らかとした(投稿論文準備中)。一方、nefiracetamはNMDA受容体機能を亢進することを電気生理学的手法により明らかとした。このNMDA受容体機能の亢進には、protein kinase Cの活性化が重要であることも同時に明らかとした。(Moriguchi et al.,Mol.Pharmacol.(2007))今後の予定として、ピロリドン誘導体ならびにアダマンタン誘導体の記憶学習機構に及ぼす影響についてより詳細に検討する予定である。
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