研究概要 |
昨年度(平成18年度)には、ラットやヒトの脳組織を用いて、様々なムスカリン受容体サブタイプを、組織片結合実験法を用いて同定した。また、胃や膀胱の平滑筋や上皮などについても同様に実験を行い、脳のサブタイプ分布と比較した。さらに、神経芽細胞腫由来培養細胞などを用いて、ムスカリン受容体M1サブタイプの機能について調べた。 主な結果は以下の通りである。 (1)ラットやヒト脳組織におけるムスカリン受容体サブタイプの同定 放射性リガンドを用いた結合実験で広くサブタイプの分布を調べた実験である。^3H-QNBを用いたラット大脳皮質の組織片結合法において、ムスカリン受容体のBmax値は約1300fmol/mg蛋白で、M1、M2、M3サブタイプが、50%,25%,25%をそれぞれ占めることが明らかになった。^3H-NMSを用いた実験では、M1サブタイプのみ、検出量が低下していた。このことより、大脳皮質に存在するM1サブタイプの一部はNMSに対して低感受性であることが明らかになった。同様のNMS低感受性M1は、海馬でも見られたが、中脳や小脳では検出されなかった。また、大脳皮質におけるM3サブタイプは、ダリフェナシンに対して低感受性であったが、海馬やその他の部位においては、高感受性であった。 (2)胃や膀胱などにおけるムスカリン受容体の分布 上記の組織片結合法を用いたサブタイプの検出が妥当であるかどうか、末梢の組織を用いても調べた。M3受容体は、胃平滑筋や膀胱の平滑筋で認められ、ダリフェナシンに対して従来言われているとおり、高感受性であった。 (3)神経芽細胞腫由来培養細胞NIE115細胞やM1サブタイプを人工的に発現したCHO細胞を用いて、ムスカリン受容体刺激後の増殖能をチミジン取り込み法により調べ、そのサブタイプによる差違を明らかにした。
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