昨年度に引き続き、研究計画に沿ってELISAによるニロヒタンパク質測定法の確立」を優先的に検討した。ウエスタンブロッティングにより確認したニトロ化蛋白質を標準物質として、市販の抗ニトロチロシン抗体を用いてサンドイッチ法、直接吸着法および競合法を行った。サンドイッチ法では作成した標準物質の一部が測定できなかったが、直接吸着法および競合法では全ての標準物質が測定可能であった。ヒト血清サンプルはサンドイッチ法および直接吸着法では非常に低値であり、競合法では抗体の非特異反応の影響が示唆された。市販のELISAキットを使った測定でもヒト血清サンプルでは有意なシグナルを検出できなかった。しかし、血清サンプルを還元・アルキル化処理することにより直接吸着法の測定感度を高めることができ、健常者群と冠動脈疾患群を比較すると疾患群が有意に高かった(P=0.03)。また、高速液体クロマトグラフィー-電気化学的検出法(HPLC-ECD法)によるニトロチロシン定量においても、冠動脈疾患群が有意に高値であった(P=0.0003)。ニトロチロシン含有リポタンパク質測定では、抗ニトロチロシン抗体および各種アポリポタンパク質に対する抗体を用いてサンドイッチEL ISAの分析条件を詳細に検討したが、サンプルの前処理や超遠心でのリポタンパク質分画の分離を行った後の分析でも、ニトロチロシン含有リポタンパク質が血清中に存在していることを示す有意なデータは得られなかった。また、ニトロ化リポタンパク質に対する自己抗体についても、その存在を確認するまでには至らなかった。したがって、冠動脈疾患での血清ニトロチシン高値は、リポタンパク質粒子に存在するアポタンパク質がニトロ化の主要なターゲットタンパク質になっているはではなく、他の血漿タンパク質がトロ化を受けている可能性が示唆された。
|