研究概要 |
エキシマー蛍光誘導体化法は,通常の蛍光誘導体化にエキシマー蛍光現象を導入する分析方法で,様々な極微量生体成分の高感度・高選択的分析を可能とする。その分析法を臨床応用することで,生体中のポリカルボン酸濃度が高値を示すような有機酸代謝異常症(グルタル酸尿症やメチルマロン酸尿症,Canavan病など)の簡便・迅速なスクリーニング法の開発を試みている。研究初年度は,有機酸代謝異常症マススクリーニングプロトコールを確立するための予備検討として,関連ポリカルボン酸の標準物質を用いて,以下の検討を行った。 1.用手法の開発(蛍光スペクトル解析) 市販されているいくつかのピレン試薬を用いて,有機酸代謝異常症に関連のあるポリカルボン酸類(グルタル酸,アジピン酸,メチルマロン酸,N-アセチルアスパラギン酸など)についてのエキシマー蛍光誘導体化に関する基礎的条件を最適化した。本測定は蛍光分光光度計で行い,その蛍光スペクトルの多角的解析から,迅速なポリカルボン酸総量の概算計測が可能となった。 2.精査定量法の開発(HPLC精密分析) グルタル酸尿症などの有機酸代謝異常症の精査診断のためには,ポリカルボン酸総量の概算計測だけでなく,各カルボン酸種の定性・定量分析が不可欠である。そこで,上記用手法で最適化した分析条件において,関連ポリカルボン酸のHPLC分離分析を行った。逆相分配カラムを用いるイソクラチック溶離を組み合わせることで,各カルボン酸類を注入量当たりフェムトモルレベルで精度良く検出することができた。本HPLC定量法は,生体中に共存するモノカルボン酸類(アミノ酸,酢酸,脂肪酸など)の影響を受けない極めて選択性の高い分析法であった。
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