研究概要 |
卵巣癌は近年増加しているが,リスクファクターとなる生活習慣や環境要因が特定されず,早期発見も難しいため悪性化しやすい癌として知られる。代表者らは卵巣癌でLTBP-1L(Latent TGF-β Binding Protein-1L)が高発現していることを見い出し(Higashi T et al.2001),発現調節に重要と考えられるLTBP-1L遺伝子上流配列中にGenbank登録配列と異なる一塩基(変異型とする)が存在し,新規の一塩基多型(SNP)であることを明らかにした。実際に本学附属病院の卵巣癌臨床症例において約8割で変異型が検出され,ホモで変異型を持つ症例ではヘテロに比べ5年生存率が有意に低いことをつきとめた。本課題ではこの一塩基多型が卵巣癌の新規予後診断マーカーや治療の標的分子として有用であるかを検討するための基礎的研究を行った。 本年度はまず新たに同定したLTBP-1L遺伝子型(変異型)による転写発現調節機構を解析した。遺伝子型ごとの転写活性を比較した結果,変異型では有意に転写活性が高く,これらの配列に結合する転写因子を同定したところ,変異型では転写因子Sp1との結合力が高まるために,転写活性が著しく上昇することが明らかになった(Higashi T et al.2007)。ホモ変異型症例ではLTBP-1L蛋白の発現も高く,転写活性上昇sが蛋白発現上昇に繋がっていることが示された。今後,癌細胞で発現したLTBP-1L蛋白の役割,作用機序を明らかにするために,癌細胞でLTBP-1Lを強制発現または発現抑制することでLTBP-1L機能解析を進める。
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