新たに開発した、安価にかつ迅速に遺伝子多型による毒性感受性の差を見出すことのできるPaired acute inhalation test(Isse et al.2005)を用い、アクロレイン、ベンゼン等のアセトアルデヒド以外のアルデヒドの毒性がALDH2遺伝子多型により異なるかを検索した。アクロレインで毒性感受性の差があることを予備実験で見出したので本実験の実施、血中アクロレイン代謝物濃度測定の準備中である。 また既にマイクロアレイ法で見だした、アセトアルデヒド全身曝露における細胞障害の分子標的の候補の1つが、アセトアルデヒドおよびその他のALDH2酵素の基質と付加物を形成していることをダイオードアレイ高速液体クロマトグラフィー法で確認した。さらに当該タンパク質がアセトアルデヒドと付加体を形成する際に亜鉛を放出することを、亜鉛蛍光指示薬および蛍光分光光度計を用いて確認した。現在In vivoでも同様の反応が生じているかを肝スライス標本を用いて確認するため、細胞内亜鉛濃度イメージング実験の準備中である。 アルコールやアルデヒドは毒性影響が明らかであるが、多くの化学物質と同様に細胞障害機序の分子的機序は不明であった。Hao & Maret(2006)はアセトアルデヒドにより肝細胞内亜鉛濃度が上昇すること、Sampy et al.(2007)はErk-Est-like protein-1-activating protein-1がアルデヒド付加体形成により細胞内情報伝達機構が障害されることを示した。われわれの結果も彼らの結果と同様に付加体形成が細胞障害の直接要因となっていることを示すものであり、新しい曝露バイオマーカーの発見、細胞障害機序を解明の解明につながるものと期待される。
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