本研究では、長時間労働や変則的な夜勤交代勤務などの過重労働に伴い発現する著しい心身の疲労感や睡眠障害(慢性的な負担兆候)を、長期に渡り簡便に測定し、適切に評価しうる指標を含めた新しい手法の開発を目的とした。今年度は、長時間夜勤看護労働に伴う心身機能の負担についての現状把握のため、急性期病棟勤務看護師15名を対象として、夜勤時に特徴的な心身機能と身体活動パターンの変化について評価を行った。 その結果、以下のことが明らかとなった。(1)夜勤帯の身体活動量は日勤帯とほぼ同値であった。このことより夜勤帯では少ない人数で日勤帯相当の業務量をこなしており、身体負荷度は低くはないことが示唆された。(2)仮眠の様相を仮眠取得時刻帯別(23時群、3時群)に比較した結果、両群の仮眠休憩時間、仮眠時間(実際に睡眠を取っていたと判定された時間)および睡眠効率については有意な差はみられなかった。一方、睡眠潜時(仮眠前のテスト実施後から寝つくまでの時間)については3時群の方が有意に長かった(P<0.01)。(3)仮眠取得時刻帯の相違が心身機能へ及ぼす影響を検討するため、「群(23時群および3時群)」および「勤務時刻(5時点)」の2要因の分散分析を行った。その結果、交互作用が有意であったのは「時間切迫感」(p<0.01)であり、「勤務時刻」に有意な主効果がみられたのは「集中出来ない」、「時間切迫感」、「腰痛」、「疲労感」(p<0.01〜p<0.001)であった。「群」については、いずれの項目においても有意な主効果はみられなかった。そこで、勤務時間の経過に伴い観察された気分、身体症状の変化について、各群の特徴的な傾向を検討したところ、仮眠休憩を取得するまでの連続勤務時間が長いほど(3時群)、仮眠休憩後の心身機能の回復度が低く、心身への負担は大きいことが示唆された。
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