研究概要 |
地域での総合的な自殺予防対策の推進にあたっては,個人の一時点の抑うつ状態だけでなく背景にある日常生活におけるストレス要因の評価が重要である。秋田県K市の30歳から69歳の全住民19624人を対象として,ストレス要因簡易調査票を用いた質問紙調査を行った。(回収率48.9%)調査票の配付回収は行政および住民組織の協力により行った。回答に者の内訳は男性42.6%,女性57.4%,平均年齢52.7歳であった。住民の抑うつ度の評価はCES-Dを用いた。日常生活におけるストレス要因の評価は,15項目からなるストレス要因簡易調査票を用いた。CES-D得点の有効回答数は8977人であり,得点の平均(標準偏差)は16.7点(9.5)であった。CES-D得点の標準的なカットオフ値である16点以上割合は44.9%であった。ストレス要因簡易調査票による日常生活ストレス得点の有効回答数は6852人であった。得点の最低は0点,最高は14点であり,平均(標準偏差)は2.3点(2.1)であった。基本属性に関して,性別では男性2.26点(2.08),女性2.34点(2.14)と差はなく,年代では30歳代2.34点(2.14),40歳代2.37点(2.08),50歳代2.31点(2.17),60歳代2.14点(1.99)と60歳代に低い傾向(p=0.01)が見られた。CES-D得点と日常生活ストレス得点との関連については,Spearmanの順位相関係数は0.342(p<0.001)と有意な相関があった。抑うつ傾向の有無に関しては,CES-D15点以下の1.76点(1.65)に対し,16点以上では2.94点(2.40)と有意(p<0.001)に高かった。今後,日常生活におけるストレス要因が長期的な抑うつ傾向の変化に与える影響を評価する必要がある。
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