本年度は、現在までに収集した、身体計測、尿検査、健康診断、食事調査、及び対象者の属性(人口学的因子、社会経済的因子、衛生環境に関する因子)のデータを整理・データベース化し、統合的な解析を行った。対象者は、西ジャワ農村部の4集落、及び都市部の1集落で収集した小学校高学年の学童250名とその父母、兄弟である。 学童はWHOの標準値として用いられるアメリカの子どもに比べ成長が遅く、4割が成長遅滞であった。都市部のほうが農村部よりもHAZ、WAZの平均値が良好であり、特にその差は身長について顕著であった。食事調査の結果、都市部は農村部よりも鶏肉や海水魚の摂取頻度が高く、良質なタンパク質の摂取が地域差に寄与することが示された。また、農村部の学童はタンパク質、ビタミンA、カルシウムの摂取量が不足しており、これらの負荷によって成長が遅滞していると考えられる。対象とした小学校5・6年生の学童の多くは、第二次性徴が開始する思春期の前の発達段階にあり、一般に環境要因の影響を受けやすい時期と考えられている。本研究結果からも、栄養素摂取が成長のバラつきに有意に関連しており、このような環境要因の改善が西ジャワの子どもの成長改善に重要であることが示された。また、農村部において身長の成長遅滞が顕著であったことから、タンパク質摂取不足といった環境が長期間蓄積した結果だと推測される。 研究期間終了後も同対象地域において、今回データを得られなかった年齢層の子どもを含め、継続的に身体計測および関連データを収集し、解析を進めていく予定である。
|