本研究は、青少年が適切な性のリスクに関する予防行動の意思決定を行う際、予防を行わない性行為をすることによって生じる性感染症や妊娠のリスクがどの程度であると認知しているか(リスク認知)が重要な要因であると考え、青少年の性に関するリスク認知を明らかにすると同時に、これを測る尺度を開発することを目的として行われた。今年度は前年度の結果より作成した項目から質問票を作製し、調査を行った。質問票の内容はフェイスシート、セルフ・エスティーム尺度、性に関するリスク認知尺度、コンドームの効力感、性に関する知識・教育の経験、属性(年齢、性別、性経験の有無、予防行動、性感染症の罹患歴など)である。金沢大学で開講されている5つの講義から計460部を回収した。男性174名女性285名、平均年齢19.5歳であった。質問紙調査の分析方法は、欠損値の解析、項目ごとの回答パターンの解析、検証的因子分析、クロンバックα係数による内的整合性からの信頼性の推定、弁別的妥当性・基準関連妥当性の検討、G-P分析を行った。重み付けのない最小二乗法によって初期解を求めバリマックス回転により因子分析を行った。これらの結果により、因子の解釈可能性から13項目5因子が最も妥当と考えた。因子とそのクロンバックのα係数は「リスクの身近さ(0.7)」「コンドームの効力感(0.85)」「コンドーム使用当然(0.83)」「自身でのコントロール可能性(0.83)」「予防のためのアブスティネンス(0.94)」とした。累積寄与率は62.3%であった。以上により、青少年の性に関するリスク認知の構成概念尺度を作成し、リスク認知評価用の質問票を作成した。
|