【背景・目的】本研究は、性感染症や計画外妊娠といった性行為のリスクに対する予防行動の意思決定において、予防を行わないことによるリスクがどの程度であると認知しているかが重要な要因であると考え、青少年の性に関するリスク認知を明らかにするとともに、これを測定する尺度を開発することを目的とした研究を行った。今年度は、これまでの結果を基にして作成した調査票を用いて追跡調査を行うことにより、尺度の信頼性および妥当性を検証した。【方法】大学生約250名に調査を依頼し協力を得た。一回目調査終了の約2ヵ月後に、同じ対象者に再び調査票回答を依頼した。調査票は何れも匿名であるが1回目と2回目の調査票は、回答者が決める任意の4桁の番号によって結合し、追跡調査とした。第一回目のデータのみを用いて重み付けの無い最小二乗法により初期解を求めバリマックス回転により因子分析を行った。この際、尺度使用時の利便性を鑑みて、項目数を可能な限り減らすこと、および測定する因子数を減らすことを検討した。【結果】1回目および2回目の両方に参加し、追跡データが得られたのは136名であった。因子分析の結果、昨年度得られた「予防のためのアブスティネンス」を尺度から除き、10項目4因子の尺度を作成した。確認された因子とその内的妥当性(クロンバックのα係数)は「リスクの身近さ(0.79)」、「コンドームの効力感(0.68)」、「予防行動をコントロールする自信(0.88)」、「コンドーム使用当然(0.72)」であった。周辺等質性検定を用いて4因子の尺度得点を前後で比較したところ、何れの因子も有意ではなかったことより信頼性を確認した。【考察】大学生を対象として性に関するリスク認知構造を明らかにするとともに、これを測定する尺度を開発した。さらにこの尺度の妥当性および信頼性を検証することが出来た。現場で活用できるように努めたい。
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