研究概要 |
現在報告されている全国がん罹患数は,10〜15程度の地域データをもとにした推定値である。我が国における地域がん登録の完全性の低さと,全国推定方法に起因し,全国値は過小評されている可能性が指摘されている。これらの問題点を捕う方法として,昨年度は非線形回帰モデルを用いた推定方法を提唱した。本年度は。この方法に関する改良を行った。具体的には,がん死亡率の登録群と未登録群における差異を表すパラメータを新たに導入し,このパラメータが必要かどうかを情報量規準を用いて判別するという手法である。2001年データに対して,新たな方法を適用すると,全がんにおいては新たに導入したパラメータが必要でないモデルが撰択された。しがし部位別に滴用すると新パラメータが必要な部位も存在する事が分かった。現在報告されている全国がん罹患数(2001年)は,昨年度と同じく約20%過小評価されていると予測された。 がん罹患・死亡データを用いた解析として,生涯リスクのアップデートを行った。罹患リスクについては2001年へ,死亡リスクについては2005年にアップデートした。罹患リスクについては,1999年からの2年間で約3%上昇,死亡リスクについては,1999年からの6年間で約3%減少という推定結果が得られた。主要な部位については,リスクに関する大きな順位変動は見られなかった。 がん罹患データを用いた解析として,短期予測による現状把握を試みた。これは,現在の罹患報告の最新年が2001年であり,即時的な数値が得られない点を改良する試みである。米国で用いられているState-space-modelを用いで4年先予測による2005年の数値を予測した。がん罹患数は2001年から2005年にかけて約9万人増加しているという予測結果が得られた。
|