本年度は、3ヵ年研究の初年度であり、自閉症スペクトラム障害児の母親にインタビューをとる前段階として、いかに当事者である母親から「語り」を引き出すかということに注目し、そのための技法の専門知識提供の獲得に終始した。そのため、語り=narrative(ナラティヴ)の分析の第一人者である、やまだようこ氏による質的心理学学会(九州大学で開催)におけるワークショップに、研究協力を依頼している大学院生とともに出席し、貴重な知識を得た。 実際に、ナラティヴ(narrative)は、辞書的には「フィクションであれ、ノンフィクションであれ、当該者にとってのイベントおよび経験の話し、あるいは説明」であり、また同義語として、説明、リサイタル、自伝など言うことばも挙げられる。臨床研究でも用いられるナラティヴは、参加者(インタビュイー)の「自伝」というべきものを、いかに科学的に解釈、整理できるかということに関わってこよう。そのために、本年度は、さらに、解釈法としてのGrounded Theory Approachの第一人者の一人である大木氏による勉強会にも参加し、知識提供を受けた。 実際のインタビューを当該の母親に行うには、十分に慎重な倫理的配慮が必要不可欠と考える。確かに、現在の臨床研究において、当事者からの書面によるインフォームドコンセントが得られれば、倫理的配慮を行っていることにもなろうが、今後、本研究の成果を、世界的に公表する(例:海外関連学術専門誌への投稿受理)ためには、厳格なる倫理委員会の承認を得た上で研究を開始しなければならないことは明白であろう。今年度は、その倫理委員会承認のための講習会が締め切られており、進められなかったことは残念であるが、19年度は、まず倫理委員会承認のための講習会を受講することが必要である。
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