研究概要 |
障害発見の原点として,最も子どもに近い存在であり,接触時間も長い母親(あるいは主たる養育者)に,子どもが生まれてから,自閉症スペクトラム障害(ASD)の診断を受けるまでの母親から見た子どものASD特徴の本質を質的に捉え,見出された本質をもとに,構造化面接法(Japanese Diagnostic Interview for ASD:JADI-ASD)の質問項目を構築および開発する.精神保健,母子保健に携わる専門家なら,JADI-ASDにより,臨床の力量(経験)に左右されず,正確にASDの鑑別が行えることとなり,ASDへの早期介入もよりスムーズになるはずである.本研究は,構造化面接法であるJADI-ASDを開発し,その有用性を検討することを目的とする. 本年度は,研究協力機関としてASD児への臨床教育を行っているAセンターに依頼,承諾を受け, Aセンターでの実地研究を進めた.「原則として知的障害を伴わない就学ASD児」を持つ母親(16人)に対して深層的なナラティヴインタビューを行った.「子どもが生まれてから現在に至るまでの子育てを思い出し,ライフヒストリーとして語ってもらう」形式をとった。インタビュー内容は,すべて逐語録として起こした. さらに,Barnett(1990)によるChildren's Playfulness Scale(CPS)の日本語版である, JCPS(Japanese version of CPS)の開発を行った.子どもの遊びを母親評価してもらうことで, ASDをスクリーニングできるかを探索的に検討した.予備的研究だが, JCPSは発達障害のスクリーニングに有用な可能性があると考えられた.次年度は,より多くの参加者にJCPSに回答してもらい,再度結果を分析,信頼性および妥当性を検討し,JADI-ASDの補助尺度として臨床現場で実践的に用られるものとしたいと考えている.
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