研究概要 |
認知症や昏睡、脳卒中後遺症などで患者が医療同意困難な状態になった場合、日本では通常、家族などの患者の近親者が代理人となって意思決定を行っています。これは日本だけの習慣ではなく、欧米などの諸外国でも同様です。しかしながら、患者本人と代理人の意向の一致率は低いことが繰り返し報告されており、話し合いを持つなどの方法では改善しないという知見もあります。 申請者らが行った調査では、患者の立場では治療負荷を重要視するのに対し、医師や看護師の立場では治療の成功可能性を重視するという治療決定における考え方の違いが明らかになりました。また治療説明を行う医師の立場からも,患者家族との合意形成や,治療効果の判断など,様々な問題点が明らかになりました.平成19年度はこれらの調査をまとめて,論文として海外の学術に発表しました.日本において,このような話題を扱った研究は少なく,またこれらの研究からは,日本独自の問題点も明らかになっており,本研究は日本の医療同意困難な患者の治療決定の質の向上を考える上で非常に意義があるものであると考えられます. 一方で平成19年度は新たに療養病床における経管栄養に焦点を当てて,治療決定について詳細に検討を行いました.調査では医療提供者側の意向だけでなく,提供している治療の実態や,その治療の提供に関わる関連要因を検討することを目的として「療養病床における経管栄養法の施行実態とその関連要因に関する調査」を実施しました.調査対象者は全ての療養病床(722施設)で,調査項目は,経管栄養法の施行の実態,医療同意困難な患者の治療決定の方針,医療同意困難な認知症高齢者の患者さんの仮想のシナリオに対する判断,医療同意困難な脳動脈瘤破裂後後遺症の患者さんに対する判断,回答する医師と施設の属性,という内容で構成されます.この調査結果も,学術誌や学会発表に向けて同様に発表する予定である.
|