研究概要 |
本研究は小中高生における不眠症の有病率及びその環境要因や心理社会的要因を明らかにすることを目的とした。小学生版と中高生版の質問紙には基本的属性(性、年齢、身長、体重、学力、経済状態)、睡眠(不眠症、就寝時刻、起床時刻、睡眠時間、起床後の調子)、環境(光、騒音、寝室状況)、心理社会的項目(抑うつ、希死念慮、孤独感、自尊感情、社会的援助、人間関係、主観的健康状態、登校意欲、イライラ感、いじめ)、生活習慣・身体健康(食事、運動、テレビ、テレビゲーム、塾通い、肥満)等を盛り込んだ。質問項目における不眠症の定義は、(1)最近1ヶ月の睡眠について主観的によく眠れなかったと回答、(2)入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒または熟眠困難の症状の1つ以上が最近1ヶ月に週1日以上ある、(3)不眠のため翌日の日常生活に支障がある、の3条件をみたす者とした。小学生1, 000名、中学生1, 500名、高校生1, 000名に対して3度に亘り質問紙調査を行った結果、小学生では1割程度、中高生では、2割程度が不眠症傾向であり、不眠症傾向である小中高生は共通して、抑うつ気分、登校意欲の精神保健指標と縦断的に関連があることが明らかとなった。小中高生の不眠症傾向者共通して就寝時刻が遅く、睡眠時間が短い傾向があった。また生活面では、小学生、中学生の不眠症傾向者のテレビ視聴時間との縦断的関連が明らかとなった。小中高生それぞれ6名にアクチウォッチによる睡眠-覚醒の観察を行った結果、質問紙とアクチウォッチによる睡眠時間はほぼ一致していたが、不眠症傾向者の入眠潜時、中途覚醒時間との関連はみられなかった。以上の結果から、小中高生の不眠症の予防には、テレビの視聴時間の制限と就寝時刻を早めることの徹底が効果的であることが示唆された。上記の結果の一部は日本学校保健学会にて発表を行った。
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