研究概要 |
目的 : 精神保健の非専門家を対象に、精神障害に関する教育的介入を実施し、その効果を検討した。方法 : 民生委員等を対象に、うつ、自殺等の精神疾患に関する知識と対応技法の向上を目的とした研修会を開催した。介入内容としては、精神疾患に関する医学的な講義、初期対応法について2時間のプログラムを提供した。評価は、精神障害に関する知識、初期対応に関する自己効力感、社会的距離、健康関連QOL等に関して先行研究で用いられている既存の自己式調査票を用い、研修実施前、研修3か月後に調査した。非無作為化対照試験のデザインで、対照群として研修会に参加しない同地区の民生委員にも調査のみを実施した。結果 : 介入前後のデータがそろっていたものは、介入群63名、対照群93名だった。統合失調症のヴィニエットを提示して、統合失調症と正しく認識した人数は、介入群のほうが増加した(研修前介入群3(3.6%), 対照群7(8.3%), 3か月後はそれぞれ10(17.9%), 6(7.1%), 多変量ロジスティック解析OR:4.2, 95%CI:1.28-14.06, p=0.018)。しかし、うつ病のヴィニエットに関する認識率の増加は見られなかった(介入前介入群12(14.3%), 対照群12(13.6%), 3か月後はそれぞれ15(26.8%), 17(20.2%), OR:1.3, 95%CI:0.61-2.89, p=0.473)。精神健康に問題を持つ人への対応に「全く自信がない」と回答した人数は、統計的には有意差は見られなかった(介入前介入群45(71.4%), 対照群53(57.0%), 3か月後はそれぞれ28(45.9%), 39(41.9%), OR:0.9, 95%CI:0.41-1.82, p=0.690)。考察 : 精神障害に関する講義を中心とした研修を民生委員に実施した結果、統合失調症に関する知識面では改善がみられたが、うつ病に関する知識、初期対応に関する自己効力感には変化はみられなかった。態度の変化を促すためには、今後はロールプレイなどの態度、行動面での変容に焦点をあてた介入方法の工夫が望まれる。
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