研究概要 |
我々は,現在までに,乳幼児呼吸器感染症患者におけるヒトメタニューモウイルス(hMPV)感染症の実態把握,ならびに分子疫学的手法を用いた流行解析をおこない,国内での流行時期,流行ウイルス株の遺伝学的分類を明らかにしてきた。本年度は,ELISAを用いて,臨床検体からhMPVを迅速かつ簡便に検出する系の構築を試みた。検出系に用いる抗体は,精製hMPVvirion,または,大腸菌を用いてinvitro調整したphosphoproteinを抗原として作製した。抗体によるhMPV検出感度を調べるためには,臨床検体中に含まれるウイルス量を定量する必要がある。そのため,まずhMPVのリアルタイムPCR法の構築を試みた。Fusion遺伝子領域を標的としたリアルタイムPCR法を構築し,検討した結果,既報の4つの遺伝グループをすべて検出可能であった。また,他の呼吸器ウイルス(RSウイルス,パラインフルエンザウイルス1、2、3型,アデノウイルス,インフルエンザウイルス)との交差反応は観察されなかった。感度および特異性について,RT-PCR法,nested-PCR法と比較検討したところ,特異性において差は見られなかった。一方,感度については,RT-PCR法よりも高く,nested-PCR法よりも低いことが判明した。以上の結果より,我々が構築したリアルタイムPCR法は,臨床検体からhMPVを効率よく特異的に検出可能であることが明らかとなった(論文投稿中)。現在,本法を用いて,作製した抗体の検出感度,特異性の検討をおこなうとともに,ELISAによるhMPV検出系の構築をおこなっている。
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