残留性環境汚染物質として問題となっている難燃剤ポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDEs)の食事からの摂取量の把握を目的として、2006年度夏期に調製したトータルダイエット試料中のPBDEsを分析した。その結果、第4群(油脂類)および第5群(豆類)、第10群(魚介類)、第11群(肉・卵類)からPBDEsが1.82、0.03、0.48、0.01ng/gの濃度で検出された。第10群はペンタ-BDE由来、第4群はデカ-BDE由来の異性体の残留が顕著であった。また、不検出値をゼロ(ND=0)として試算すると、食事から摂取するペンタ-BDEの93%が魚介類経由であった。成人における全食品群からのペンタ-BDE(3-6臭素化物26異性体)の合計一日摂取量は、ND=0として計算した場合で46ng/人/日であり、スウェーデンやスペインで報告されている食事由来のPBDEs摂取量と同程度の値であった。また、デカ-BDE(9-10臭素化物4異性体)の合計一日摂取量はND=0として計算した場合で21ng/人/日であった。これらの値は、米国環境保護庁が設定するPBDEs原体の参照用量と比較して十分に小さく、我が国では食事経由のPBDEs摂取による健康影響上のリスクは小さいことが示唆された。 また、これまで国内の食用植物油のPBDEs汚染実態は不明であったが、今回、市販の18銘柄の植物油試料(ナタネ油6検体、トウモロコシ油3検体、サフラワー油2検体、ゴマ油2検体、オリーブ油1検体、調合油4検体)を対象にPBDEsの残留実態調査を実施した結果、7銘柄の植物油試料(ナタネ油、調合油)から約1-4ng/gのPBDEsが検出され、一部の製品中にppbオーダーでPBDEsが残留していることが明らかとなった。今後、植物油へのPBDEsの混入経路や高温調理時のPBDEsの分解挙動の解明が望まれる。
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