ミトコンドリアDNAの塩基番号303-309のC挿入・欠失および16189T→C置換による塩基長ヘテロプラスミーを保有する2名を対象とし、それぞれ血液、口腔粘膜、爪を1試料ずつ、毛髪は一個人から4試料を採取した。サブクローニングにより1試料について40コロニーを検査しその構成成分を詳細に検討し、PCRダイレクトシークエンス解析結果と比較した。1例目において303-309ではC8の存在割合が高く、次いでC7、C9を含んでいた。血液、口腔粘膜、爪でC8以外の成分の割合が比較的高い割合を示し(15-35%)、毛髪4試料ではC8以外の成分の割合は顕著に低く(0-7.5%)、毛髪の4試料間では類似したパターンであった。2例目は303-309ではC9、C10がほぼ同程度で高い割合を示すパターンであり、血液、口腔粘膜、爪、毛髪(2試料)ではC9、C10がいずれも30-50%の割合であったが、他の毛髪ではC9のみが80%以上を示し、C10が10%以下と顕著に低い割合を示した。毛髪におけるパターンの違いは一個人内でも顕著であったが、毛髪間あるいは毛髪と他の組織との間でパターンの違いが必ずしも生じるわけではないことが明らかとなった。また、サブクローニングにより存在割合の大きいC連続数はPCRダイレクトシークエンス解析でも同様のC連続数と判定可能であるが、サブクローニングにより2つ以上のC連続数が同程度か近い存在割合の場合には、PCRダイレクトシークエンス解析によりC連続数の決定は困難であった。2例とも16189T→Cによる塩基長ヘテロプラスミー部位では毛髪間および組織間において顕著な違いは観察されず、同一人の2箇所で生じている塩基長ヘテロプラスミーの組織間の相違は一致しないことが示された。
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