近年、MDMA等錠剤型乱用薬物の押収が急増しており、その乱用が社会問題となっている。これら錠剤は、錠剤毎に成分や含有量が異なるため、摂取した際の体内動態の予測は難しく、薬物相互作用によって体内動態がより複雑化することが予想される。そこで、錠剤中のいくつかの成分をラットに単独投与または併用投与し、尿及び胆汁中に排泄される未変化体及び代謝物の時間的、量的変化を測定することで、薬物相互作用によって排泄にどのような影響を及ぼすかを検討する。また、ヒト由来の酵素を用いた1in vitro代謝実験から、どの酵素が代謝過程における薬物相互作用に関与するかを検討する。これらの結果を総合して、ヒトがMDMA等錠剤成分を服用した際の薬物動態及び薬物相互作用を予測するためのデータを得ることを目的とする。 平成18年度は、薬物相互作用による排泄への影響についての研究を行った。ラットに麻酔下、静脈及び胆管にカニューレを挿入し、MDMA、メタンフェタミン、ケタミン等を様々な組み合わせで単独または併用で静脈投与した。代謝ケージに放置あるいはボールマンケージに固定し、一定期間毎に自然排泄される尿を回収あるいは経時的にカニューレから胆汁を採取した。各試料から塩酸による脱抱合、アセトニトリルによる除タンパク等により各薬物の未変化体及び主代謝物を抽出・濃縮し、LC-MS/MSにより定量した。単独投与と併用投与の場合での速度論パラメーターを比較することで、薬物相互作用による排泄への影響について検討した。 様々な薬物間で相互作用を検討したところ、MDMAとカフェインの併用により、MDMAの胆汁排泄の減少が見られた。一方、尿中排泄にはほとんど影響が見られなかった。このことから、カフェインとの相互作用によるMDMAの胆汁排泄阻害が示唆された。平成19年度は、代謝過程における薬物相互作用について検討を行う。
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