本研究はわが国の一般的な皮膚科外来において施行可能な成人型アトピー性皮膚炎(Atopic Dermatitis:以下AD)患者の集団認知行動療法の開発を目的としている。そのために本年度は、わが国1の皮膚科外来において、掻痒があり、皮膚症状が可視部位に出現し、社会不安などの心理的問題を抱えていることが予想される皮膚疾患である蕁麻疹患者と比較して、成人型AD患者の心理的な問題にはどのような特徴があるかを調べる調査を行った。その結果、蕁麻疹患者と成人型AD患者は社会不安のレベルにおいては差がなかった。しかし蕁麻疹患者においては、皮膚症状の可視度が高く、自覚された社会的スキルの程度が低いほど社会不安のレベルが高かったが、AD患者においては、皮膚症状の可視度に関係なく、自覚された社会的スキルが低いほど、社会不安のレベルが高いことが明らかになった(投稿中)。 以上の事前調査から、本プログラムの参加者は、皮膚症状の重症度に関わらず募集することが重要であり、内容は以下の2つのタイプの患者群がいる可能性に考慮する必要があると考えられた。すなわち1.皮膚症状の可視度が低いが、社会不安をはじめとする心理的な苦痛が高い患者2.皮膚症状の可視度が高いが、心理的苦痛が低くアレキシシミア傾向があると思われる患者である。 次に、県内の皮膚科医を対象に講演を行い、一般の皮膚科で当プログラムを施行する際の問題点を明らかにした。また実際に本プログラムを行う大阪警察病院皮膚科を視察した上で、看護師等に説明を行い、協力を求めた。そして皮膚科医と協議の結果、施行するプログラム内容を修正し、大阪警察病院院長に許可を得た。 また、患者に対する公平性などの観点から施行する対象者は掻痒を伴う皮膚疾患患者に広げて行うことで合意し、あらたに案内パンフレット兼調査用紙、各セッションで使用する説明パンフレット兼記録用紙を作成した。
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