本研究はわが国の一般的な皮膚科外来において施行可能な成人型アトピー性皮膚炎(Alopic Dermalitis:以下AD)患者の集団認知行動療法の開発を目的とした。昨年度の調査研究により、皮膚症状の可視度に関係なく、自覚された社会的スキルが低いほど、社会不安のレベルが高いことが明らかになったため、本プログラムの参加者は、皮膚症状の可視度に関わらず募集することとした。そのため従来の研究のように、皮膚科医の判断により心理的介入が必要だと思われる患者に参加を促すだけではなく、ポスターやパンフレット等により幅広く参加を呼びかけた。また院内における患者へのサービス提供の公平性という倫理的な観点から成人型AD患者だけでなく、痒みを伴う慢性皮膚疾患患者を対象とした。その結果、AD患者を含み最大82名の慢性皮膚疾患患者の参加があった。合計4回(リラクゼーション講座、ハビット・リバーサル講座、対人スキル訓練講座、復習会)の心理教育を中心とした認知行動療法プログラムを毎週1時間実施し、プログラム参加前後に各講座に対する「期待度」、「必要度」を5件法にて調査した。その結果、プログラム参加前の「期待度」「必要度」ともに「リラクゼーション講座」が最も高く、参加後においても同様であった。一方、「期待度」「必要度」が最も低かったのは「ハビット・リバーサル講座」で、参加後も同様であった。本研究の結果から、皮膚症状の可視度に関係なく幅広い患者を対象に心理的介入を行う必要性が示唆された。しかし心理教育を中心としたプログラムを施行した場合、海外の先行研究において同じように効果があるとされている講座であっても、本邦の患者の期待度や必要性の理解に関してばらつきがあることが示唆された。そのため、今後AD患者を対象にした集団認知行動療法の開発にあたっては上記の結果を考慮する必要があることが示唆された。
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