研究概要 |
自殺遺伝子(herpes simplex virus thmidine kinase, HSV-tk)と単球走化因子(monocyte chemoattractant protein-1,MCP-1)の両者を組み込んだbicistronic adenovirus vector(Ad-tk-MCP1)を用い、腫瘍再移植による生体の抗腫瘍反応を評価し、肝癌再発予防の可能性を検討している。現在までに、以下の検討を行った。(1)皮下腫瘍(HuH7)nude miceモデルでの腫瘍再移植蜘制効果。(2)再移植後の血清IL-12、IL-18値の検討。(3)再移植した皮下腫瘍部及び脾臓における免疫組織学的検討、並びに皮下腫瘍部のIFN-γの発現の評価。(4)adenovirus vector感染細胞とマクロファージ、樹状細胞(DC)を混合した時のIL-12産生能の検討。(5)皮下腫瘍(BNL,1MEA.7R,1)immuno-competent miceモデルでの腫瘍再移植抑制効果。現在までの結果を以下に示す。nude miceモデルにおいて、Ad-tk-MCP1を用いた治療群の腫瘍再移植に対する腫瘍増殖の高い揮制効果を認めた。又この腫瘍再移植の抑制効果はNK-cellに対する抗体(anti-asialo GM1 Ab, AGM1Ab)の投与によって減弱し、異なった種の腫瘍を再移植した時にもみられた。他のベクター群に比し、Ad-tk-MCP1群の再移植後の血清においてIL-42、IL-18値が上昇していた。Ad-tk-MCP1群の皮下腫瘍部では、AGM1Ab陽性細砲の浸潤を多数認め、IFN-γの発現が増強していた。又脾臓部でもAGM1Ab、及びMac-1(anti-macrophage specific mAb)陽性細胞の浸潤を他のベクター群に比し認めていた。in vitroの検討では、Ad-tk-MCP1感染死滅細胞とマクロファージの混合時にIL-12値の上昇がみられ、DCとの混合時では細胞の死滅の有無に関わらず、Ad-tk-MCP1感染によるIL-12の上昇傾向がみられた。nude miceモデルと同様にimmuno-competent miceモデルにおいてもAd-tk-MCP1治療群の腫瘍再移植に対する腫瘍増殖の高い抑制効果を認めた。今後、再移植の時期を変更した時の検討や、ワクチン効果などを含め更に奥深く検討を進める予定である。
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