研究概要 |
糖尿病患者における逆流性食道炎の高頻度発症,重症化の機序について詳細は未だ不明であり、今回我々は、そのメカニズムを明らかにすることを目的に平成18年度の検討を行った。糖尿病患者では神経障害を合併することがよく知られているが,食道知覚が低下しているため酸逆流を感知した際におこる食道蠕動運動が低下することで逆流性食道炎を高頻度に合併し,またその重症化がおこっている可能性がある。そこで、はじめに食道運動機能が非糖尿病患者と糖尿病患者で異なっているか否かについて再検討を行った。その結果、糖尿病患者では非糖尿病患者と比較して食道体部の蠕動圧に変化は見られないが、食道蠕動速度の低下が認められ、食道クリアランス能力の低下が見られることが明らかとなった。また、糖尿病患者において逆流性食道炎の頻度が高く重症化が見られるもう一つの機序として糖尿病による末梢神経障害に伴う食道粘膜の知覚の低下が関与していると考えられている。実際の糖尿病患者での検討の前にまずはラットにおいて食道知覚に関与すると考えられるカプサイシン感受性神経の存在・分布を再度確認するとともに、ラットの逆流性食道炎モデルを作製し逆流性食道炎モデルの食道粘膜におけるカプサイシン感受性神経の分布に変化が見られないか、またバニロイド受容体(TRPV1)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、CGRP受容体に変化が見られるか否かに関して検討を行っている。現在データの解析中であり近いうちにその結果を報告できると考えている。
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