研究概要 |
E3ユビキチンリガーゼであるCHFRが細胞周期や微小管阻害剤の感受性を規定する分子メカニズムを明らかにする目的で,以下の研究を行った。1.CHFR結合蛋白の解析:HEK293細胞にFlag-CHFRを強制発現し,ユビキチン化に必須の内在性E2酵素群との結合性を評価した。標的蛋白の分解を促進するユビキチン化を促進するE2であるUbcH5とは強い結合を示したが,分解を促進しないユビキチン化と関連するE2であるUBE2Nとは弱い結合を示した。この過程でFlag-CHFRと共沈するE2酵素以外の蛋白のスクリーニングを行い,CHFR結合蛋白としてPARPを同定した。ユビキチン化活性を持たないRING欠損型CHFRと比較して,野生型CHFRによって共沈されたPARPはWestern blot解析において高分子スメアを示した。このことから,CHFRはPARPのユビキチン化もしくは他の修飾の促進と関連し,PARPの機能を介して細胞周期,微小管形成やDNA修復などに関わるものと推測された。2.CHFRがNFkBの転写活性を抑制することから,CHFRの影響を受けるNFkB標的遺伝子の探索を行った。結果として血管新生促進サイトカイン遺伝子を同定し,このプロモータの転写活性がCHFRの強制発現によって抑制されることを確認した。3.CHFR発現状態の異なる細胞を用いて低分子化合物ライブラリのスクリーニングを行った。mTORシグナル経路を抑制する薬剤を含むいくつかの低分子化合物感受性とCHFRの発現状態に相関を認めたため,微小管阻害剤との併用による相乗効果について検討を進めている。以上からCHFRは核内蛋白の修飾を介して転写や細胞内シグナル伝達など,複数の細胞機能制御に関わるものと推測された。
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